これは『それでも生きる』を応援する物語
人生、生きていると様々なことがあります。喜び、悲しみ、挫折、怒り……本当に様々な感情が湧きおこりますね。
ときには自らの人生・境遇を呪いたくなることがあります。私はそうでした。まさか自分がうつになるとは思ってなかったから。
それからというもの、自分の出自、『自分』というものと向き合って、自分の人生、ものの捉え方がどれだけ人と違うか、に愕然としたのを覚えています。 自分は不完全でダメな人間だ そういった思いが心から湧き上がってきました。 この世から消えたい そう思ったこともありました。
それでも私は生きることを選びました。はじめは決して前向きな気持ちではありませんでした。「死ぬまでなんとか生きよう」と決意したのです。 でも決意なんてそう簡単にやり通せるものではありません。辛い思いをしたときに再びあの「この世から消えたい」という思いが湧き上がってくることもあります。そこでまた「もう少し。死ぬまで生きてみよう」と思い直す。その繰り返しです。
この空の下で私と同じような気持ちをもっている人がいたら、現に今、辛い人がいたら、ぜひ読んでみてほしい本を紹介します。
暁佳奈 著『ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン』
京都アニメーション(2015)
【中古】【全品10倍!4/25限定】ヴァイオレット・エヴァーガーデン 上/ 暁佳奈 価格:1,000円 |
勝手に評価表 | |
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ストーリー | ☆☆☆☆☆ |
アクション | ☆☆☆☆☆ |
感動 | ☆☆☆☆☆ |
目次
「小説家と自動手記人形」〇
「少女と自動手記人形」〇
「青年と自動手記人形」〇
「学者と自動手記人形」〇
「囚人と自動手記人形」
「少佐と自動手記人形」◎
どんな話?
これはとある時代、とある大陸の物語。そこでは手紙の代筆業として自動手記人形(オート・メモリーズ・ドール)という職業が人気を呼んでいる。人形(ドール)といっても機械仕掛けのものから人間が行うものもある。そんな自動手記人形のスターとして様々な人から人気を呼んでいる者がいた。「お客様がお望みならどこでも駆けつけます。自動手記人形サービス、ヴァイオレット・エヴァ―ガーデンです」その人は玲瓏な声でこう言う。不愛想だがその仕事の質の高さに人々は度肝を抜かれる。そして彼女はどこか人を惹きつける『何か』がある。一体、彼女は何者なのだろうか。これはそんな自動手記人形ヴァイオレット・エヴァ―ガーデンの物語。
これほどとは……
目次に「〇」をつけましたが、これは何の印だと思いますか。 これは本作を読んで私が泣いた章なのです!もう、泣きっぱなし。 どんだけ泣かせるんだ。この物語はっ!!
もう、衝撃でした。特に最後の章『少佐と自動手記人形』はもう涙、涙、涙。 私が拝読したアメブロの方のなかにもこの『ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン』を推している方がいて、「いつか読んでみよう」と思っていたのですが、今回それを決行することといたしました。
いや~まさかこれほどとは……。こんなに素晴らしい小説に私、久しぶりに。いや、私の人生至上最高傑作の小説に出会ったといってもいい。この作品はそれくらいすごい!
なにがすごいって、この小説、 とっても暖かい んです。読者にたいして「あなたも生きていていいんだよ」って言ってくれる。励ましてくれるんです。この物語に出てくる人たちはみんな心のどこかに傷を抱えながら生きています。劇作家、軍人、学者……。みんなそれぞれ強みはあるはずなのにどこか生きづらさを感じている。「自分はダメな人間だ」と心のどこかで思っている。 そんな人たちが一人の自動手記人形との関わりのなかで生きる希望を見出していく物語。読んでいて必ず共感できる箇所が見つかるはずです。
視覚的におもしろい
この物語。筆使いがとってもおもしろいです。紙面をユニークに大胆に使っています。 文字を敷き詰めるだけが小説じゃない。どこか小説の『可能性』を感じさせてくれる作品です。
チラ見せが上手い
この小説。あまり語りたがらないんです。風景描写にはじまり、いつまでたっても登場人物の名前が登場しない。かなり読者をじらします。筆者の暁佳奈さんは『じらし』のスペシャリストですね。
漂う物語
この物語は『漂う物語』ですね。物語の細部はベールに包まれている。それぞれの章は自動手記人形のヴァイオレットと依頼者の物語となっています。 各章の主語は依頼者ですが、この物語の主人公はヴァイオレットといえます。依頼者の内面の変化もありますが、ヴァイオレットの変化も読者は追っていく。そこにこの物語の奥深さがある。 仕事は完璧にこなす大人びた女性ヴァイオレット。でもどこか謎めいたところがある彼女。 この女、何者!? その正体を想像しながら読むのも楽しいですね。 中世ヨーロッパを彷彿とさせる世界観。そこで繰り広げられる”喜び”と”悲しみ”の人間劇。1冊で何度も心を揺り動かされる。この小説はそんなエネルギーを秘めています。