この映画がおもしろい!

細田守 監督『時をかける少女』を見る

ポテサラ論争や冷凍餃子論争なるものがあるようですね。恥ずかしながら私は先日、その中身を知りました。

出来合いの料理や冷凍料理に愛はあるのか。正直、この問い自体が愚問だと思います。料理は日々の生活の一場面です。それは日々続いていくものです。であるから、ある日のある食卓を切り取って、それに対して「愛がある」とか「愛がない」とか議論することはないのです。

要はバランスです。手料理を基本とし、ところどころ出来合いのもので「手を抜く」。そうすることで「自分」というものを保っていくのです。これは人生の本質ではないでしょうか。

ですから、今回の騒動が「手料理 VS. 出来合い」の2項対立に拘泥しているのはもったいない。もし、夫婦の間でギクシャクがあるのなら、それは料理以外のところに、具体的には夫婦間のコミュニケーション不足、お互いの頑張りの理解の差、支え合い、が足りていないということです。今回の論争はこれらの問題の一症例に過ぎません。心当たりがあるのなら、これを機に家庭内を顧みてみるべきでしょう。

うらみわびの【この映画がおもしろい!第2回

細田守 監督

『ときをかける少女』

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勝手に評価表
ストーリー★★★★
アクション★★★★
感動★★★★

 どんな映画?

本作の原作は筒井康孝 先生の同名の小説です。作品で驚いたのがこれ、1965年に世に出た作品なんです!タイムスリップを題材にし、かつ青春、恋愛、学園ものというライトノベルを今から約50年前に出していたとは、まさに時代の先取りですね。あらすじを見ていきましょう。

本作の主人公、紺野真琴は東京の下町に通う高校2年生。普段は津田功介間宮千昭(ちあき)といった男子生徒とキャッチボールをしたりして過ごしている。将来の予定や進路については別段決まっていない。本人曰く、頭は良くないが成績は悪くはない、らしい。そんな真琴はある日の放課後、学校の理科準備室で人影に驚き、倒れこんでしまう。その衝撃でなんと彼女はタイムリープ(時間を移動する)の能力を得てしまう

 ここに注目!

時間移動を扱った作品はその祖のH・G・ウェルズなど、かつてよりありますが、結末は決して明るくないんです。どうやら時間を元に戻したり、先延ばしたりすると現実世界の事実関係に齟齬が生じたりとか、歴史が改ざんされちゃったりとかして、とにかく都合が悪い。

私が初めて見たタイムリープものは『ハリーポッターとアズカバンの囚人』でしたが、あれも「もうひとりの自分と遭ってはいけない」という厳しい掟がありました。

ハリー・ポッターとアズカバンの囚人 [ ダニエル・ラドクリフ ]

そして「未来」というのも大きなテーマなのですが、時間移動を扱った作品、例えばH・G・ウェルズの『タイムマシン』に出てくる未来は、文明は発達しているかもしれないですが、見た目は決して豊かではないんです。つまり、未来が否定的に描かれているということ。

一方、この作品はそれも含めてかなり肯定的に描かれています。時間を行き来することで限られた時間を何倍も楽しんじゃったり、誰かの恋愛を成就させてあげたり、とにかく内容が明るい。そんななかでも以上のような時間移動の諸問題を扱っている点にも注目です。果たして真琴は問題なくタイムリープを使いこなすことができるのか。

本作は原作の『時をかける少女(1965)』の20年後の世界を描いた作品です。ニュージェネレーションってやつですね。注目なのが、原作に登場する芳山和子というキャラクターが本作にもちゃんと登場しているんです。彼女は真琴の叔母という関係です。同名作の時代を超えた共演にも注目です。

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