うらみわびの【きょう考えたこと】第30回
虫に刺されると皮膚に独特のかゆみを伴う。あれは耐え難いかゆみだ。しかし、いざ掻こうとすると「やめなさい」と止められることがある。よく聞くのが「かくと余計かゆくなる」、「皮膚が痛む」といったものだ。この言説には一定の理があるように思われる。
掻いてはいけない
調べてみると、皮膚科の医者などの多くが「掻かないで!」と警鐘をならしている。かきむしることでアトピーなどの皮膚炎を発症するからだ。なるほど。確かに虫刺されには皮膚を掻かないほうがよいようだ。
しかし、それでも私たちは皮膚を掻いてしまう。そこには理屈だけでは説明がつかない耐え難い苦痛がるとみるべきだろう。問題はその苦痛にどう対処するか、ということだ。皮膚科医の先生方がおっしゃるように、皮膚炎を起こさないようにするためには掻かないことがいちばんであろう。しかし、目の前にあるのは、それでも掻いてしまう、という現実である。
かゆみの質が変化する
実際に私も皮膚炎に気を付けながらも一度は皮膚を掻いてしまう。掻くことでことでまたかゆくなる、というかゆみのスパイラルに陥るわけであるが、それでも毎回掻く。そこで私は気づいたことがある。それは、掻く前と掻く後でかゆみの質が異なる、ということだ。最初のかゆみは虫刺され特有のうっとおしい、どうにかしたい、というようなかゆさ。掻いた後のかゆみは、なんとも言えない、一種の心地よさがあるかゆさだ。
かゆさの質がことなるのであれば、「掻く」という動作は前者のかゆさから後者のかゆさへ変化させるための動作である、と考えられる。
実際、後者のかゆさは掻いたことによるかゆみ成分であるヒスタミンが分泌されることが原因であるらしい。(参考文献1:https://eonet.jp/health/article/_4102296.html)
原因はストレス
そして私たちが掻いてしまう理由はかゆみに対するストレスが原因であるという。(参考文献2:https://www.kyudai-derm.org/atopy/docter/07.html)
つまり、掻くという動作はストレスに対する私たちの反応であり、このストレスをどう取り除くか、がかゆみへの対処の鍵となる。
かゆみへの対処法として一つあるのが、「患部をたたく」という動作だそうだ。(参考文献3:https://www.esquire.com/jp/menshealth/wellness/a30334369/how-to-approach-mosquito-bites/)
かゆみは脳が認知するので、たたくことによって、かゆみが脳に伝達されるのを防ぐのだという。これはかなり合理的な方法だろう。虫刺され特有のかゆみを感じずに済むからだ。
かゆみは痛みの一種である。大切なことはその「痛み」を無理に抑え込もうとしないことである。かゆみにも意味がある。それは身体が示す純粋な反応だ。私たちは身体の示すそれらの反応に耳を傾けるべきだろう。
例えば、心の痛みはどうか。最初はかゆみに似たもどかしさがあるのであれば、それは抑え込むべきではない。自分が弱い、などと考えてはいけない。心にも適切なケアの方法がある。もっとも一般的なのが「休む」ことだ。これは逃げ、ではない。たとえ居たたまれない思いがあったとしても、それは、心の痛みを無害なものに変化させる、作業くらいに位置付けるのがよい。「抑え込む」ということは課題の本質ではない。いかに「取り除くか」が肝要だ。これを取り違えてはいけない。
今日も皆さんが幸せでありますように