うらみわびの【この本がおもしろい!】第4回
憲法とはなんぞや。
そんな疑問やこれからの憲法の在り方を”具体的に”に議論する。
憲法学者と政治経験者の熱論に目が離せない。
橋本徹・木村草太 共著 徳間書店(2018)
『憲法問答』
|
何を憲法に書いてはいけないのか。
そもそも憲法に書いてはいけないものとはなんでしょうか。その答えは憲法が権利行使の縛りを与える対象をみるとわかりやすい。
私たちが勘違いしやすいのだが、憲法とは国民の権利を縛るのではなく、国家の権力を縛る、ものであるということ。
選挙によって選ばれた議員たちが「私たちは国民の信託を受けた」というロジックのもと、やりたい放題に法律をつくったり、権力行使を行なうとしたら、その国家は独裁国家の色彩が強くなるだろう。
そのようなことのないように、国家権力を縛るのが憲法の大きな役割である。
一方、憲法では「納税の義務」、自らの子どもに「教育を受けさせる義務」、「勤労の義務」を課している。
もし憲法が国民ではなく国家の権力を縛るものであるならば、このような規定は憲法に記すべきではないのかもしれない。
憲法には権利解除という性格もある。憲法25条が定めているように、私たちには「最低限度の生活を営む」権利がある。これがいわゆる自由でもあり、ここから表現の自由や信教の自由も憲法は保証してくれている。
日本国憲法第25条
すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
国は、すべての生活部面において、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に務めなければならない。
しかし社会において、私たちの自由は互いに対立することがある。例えば、子どもを小中学校に「行かせない」というのも親の”自由”であり、納税しないのも個人の”自由”である、という主張も成り立つ可能性がある。
自由は無限に膨張していく。私たち皆がバラ色の自由を振りかざしていては社会はとても住みにくい場所になってしまうだろう。
だから、私たちの自由はどこかで折り合いをつけなければならない。そこで出てくるのが”権利解除”の概念である。
憲法では国民が納税など、公的な立場への自由の介入を防ぐため、「納税の義務」、「教育を受けさせる義務」といった権利解除の文言を用いることがあるのだ。
憲法がおもしろいのは、このような個人の権利解除の規定でさえ、その対象は国民に直接向いていない、という点である。
国民に納税の義務を負わせたり、教育の義務を負わせた里するのは、実際の法律であり、裁判所が下す判断である。
つまり、憲法が国家権力に「このように法律を作りなさい」、「このように判断しなさい」と命令しているのであり、その結果として国民に恩恵があるようになっている。このシステムが実に興味深い。
自衛権を考える
自衛権は”いつ”行使される?
ここで話は自衛権へと移っていく。”憲法改正”について考えるならば憲法9条の自衛権は現在、最もホットな議題だろう。
自衛権といえば、日本では集団的自衛権と個別的自衛権、といった語が頭に浮かぶ。両者の線引きは解釈やシチュエーションによって異なってくるが、日本において自衛を行う組織は自衛隊である。日本の安全保障は自衛隊なしには議論できない。
自衛権をどのように捉えていくべきか。自自民党の憲法改正案では、自衛権について「必要な自衛の措置」となっている。これは現在までの考えたと一線を画している。
というのは、これまで自衛権は「必要最小限度」にとどまるべき、と考えられてきたからだ。これは日本は集団的自衛権を有しているが、これを行使することは「憲法の容認する自衛の措置の限界をこえるものであって許されない」という1972年見解に基づいている。
「必要最小限」と「必要な自衛の措置」は似て非なるもので、「必要な自衛の措置」と改変する自民党案は、国が必要と認めれば、集団的自衛権を行使できる、ということになる。
これは非常に大きな転換である。これまでは自国の領域に対する侵略に対して自衛の措置をとることは許されていた(個別的自衛権)。一方、自国の領域への侵略がなくとも、関係国に対する侵略に対して同等の措置をとることができるようになるからだ。
憲法改正と自衛隊の変容
集団的自衛権の行使容認についてはひとつの議論のテーマである。
ここで合わせて憲法を改正することにより、できることが増えるのは自衛隊が別の組織に変容する可能性ある、と憲法学者の木村草太氏が指摘する。
”自衛隊”と憲法改正を考えると、自衛隊が現状では違憲状態であり、「かわいそう」という同情論的なところがひとつある。
憲法改正と自衛隊を考える際、
- ・組織としての自衛隊
- ・実際の自衛隊の行動範囲
の2つを切り離して考えることが必要だと木村氏は訴える。憲法改正における国民投票が実施される際には、「自衛隊を明記するか」という一元的なテーマではなく、「組織」と「実務」の二つのテーマで分けて投票することで多様な民意を正確に把握できる。
国民投票とは「民意を問う」投票であるが、同時に国民が憲法を「考える」機会でもある。
その内容、例えば自衛権に関することなどは普段の生活からなじみのない私たちにとっては短時間で答えを出すことが難しい。
だから普段から関心をもつことが大切であるが、同時に国民が”考えやすい”環境の整備も必要である、と私は考える。
その方法として国民投票の際に投票項目を細分化することは有力のひとつの方法である、と思う。
憲法の格式をたかめていく
憲法9条に関する議論だけが憲法改正の議論ではない。
そもそも組織としての自衛隊の定義は憲法解釈を変えれば合憲と成り得、憲法改正は必要ない、というのが橋本徹氏の意見だ。
一方で、あえて国民投票を行う意義もある、と橋本氏は言う。
それは会見にともなう投票で湧き起る国民間の関心を高める効果がある、ということである。投票行動を通して自らが「憲法について考えた」という実感がその後の憲法の格式をたかめていくことにもつながるだろう。
憲法は国家権力を直接縛るものである。その意味で国民からは近くて遠い存在ともいえる。
でも、だからといって国民が憲法を考えなくていい、とはならない。憲法ととおして国民が国家を縛ることもできるのである。
なにより、憲法を考えることがこれからの国家の将来を考えることにもなる。
憲法の目的について橋本氏は「権力を担う人間に合憲的な憲法論へ耳を傾けさせることであり、合理的な憲法論を理解させることである」という。これは非常に意義深い言葉だと思う。「合理的な憲法論」を形つくるのは我々国民から、なのである。
価格:1,650円 |
#RPG #SF #いじめ #うつ病 #アニメ #エッセイ #オクトパストラベラー #ゲーム #スクエニ #ニーチェ #ファイナルファンタジー #ファイナルファンタジー4 #ファイナルファンタジー4 #フィクション #メンタルヘルス #リモート旅行 #京都アニメーション #人間関係 #人間関係の悩み #働き方 #単行本 #哲学 #夏 #孔子 #学校 #学習 #家庭 #小説 #幸せ #恋愛 #憲法 #憲法改正 #戦争 #政治 #教育 #文庫 #木村草太 #本が好き #正しさ #社会 #組織 #自分磨き #自殺 #適応障害 #集団的自衛権