うらみわびの【きょう考えたこと】第11回
12月28日の読売新聞朝刊の投稿欄にこんな記事を見つけました。
タイトルは「『ゆっくり』専用レジ設けて」。
なにをするにもスピードを求められるようになった、感染対策で店員との意思の疎通が難しくなった今日のレジにせいで、80代の母が買い物に行くのが億劫になった。だから「急いでいない客専用のレジを設けられないか」という投稿だ。
これを読んで「確かに」と思った。
レジもそうだが今日の私たちは急ぎ過ぎている。何かに追われている。
私の母親も「時間がない」が口癖だ。
最近では以前に比べて心なしか子どもを載せたママチャリを多く見かける。問題はママチャリの台数の増加というよりは、乱暴な運転が多く見かけられること。
ここから道路交通法の縛りを受ける運転者としての自転車運転者に対する純粋な怒りとともに、今日のママたちがどれだけ多忙を極めているのか、について思慮を巡らせずにはいられない。
話をレジのほうへ戻すが、昨今のレジの雰囲気は非常に暗く重たいものを感じる。これはひとえに客が【待ち時間】というものに対して無駄な時間と感じていることの現れと捉えてよいだろう。
興味深い記事がある。鉄道ライターの杉山淳一氏の「『急行電車の混雑』 『エスカレーター歩行』はなぜ生まれるか。リニアの必要性と”移動”の意味」(参考:1)である。
この記事で杉山氏は「急行」電車は必要なのか、という切り口から話をすすめる。つまり、ほとんどの人が始発駅から終点駅まで乗らないにも関わらず、数分の時間短縮のために「急行」電車を運行する意味はあるのか、という疑問をぶつける。
また、今日のエスカレーター歩行に触れ、「数分であっても利用時間を無駄だと考える人が多いから」と杉山氏は指摘する。
確かに私も「急行」電車の必要性については疑問に思ったことがある。
かくいう私自身、過去に杉山氏の記事に出てきた東急田園都市線を通学に使っていたことがある。
かつて誰かがネットで「『日本の電車に乗りたい』という外国人に乗ってほしい電車」として取り上げられていた東急田園都市線。ここでの「田園都市線」とは【朝の】田園都市線のことである。
朝の田園都市線の混雑率は185%(参考:2)といわれています。あらためてみるとこれはやばいね。
おそらくこれは「急行」電車の混雑率かと思われますが、この混雑率が結果として田園都市線の慢性的な遅延につながったことは皮肉です。
現在、田園都市線はラッシュ時に限り「急行」を「準急」に格下げし、乗客が「各駅停車」にも乗るように工夫をしています。
それでも混雑率はあまり変わっていない、というのが私の肌感覚でした。というのも田園都市線は急行・準急通過駅が多いのが特徴。「各駅停車」に乗っていると数駅ごとに急行・準急通過待ちとなり、いつまでたっても前に進まないのです! だからみんな仕方なく「準急」に乗るんです。
現在はコロナの影響で混雑率は下がったでしょうが、乗客が減ったのは電鉄としては痛手で、これはこれで皮肉ですね。
そもそも田園都市線の混雑・遅延問題はその乗客の多さにある、と考えます。
この路線を運航する東急電鉄というのは私鉄のなかでもものすごい会社で、社員を移住させ、街をつくりながら路線を通した、という経緯があります。
この「田園都市計画」は予想以上の電車の需要を生んだ、ということです。現在、田園都市線はこの需要を受け容れ切れていない。それが今日の路線の混雑率にあらわれています。
つまり、この問題の解決の糸口はもはや「急行」or「準急」にあらず、田園都市の人口抑制またはラッシュ時の大量の電車を処理しきれるほどの大型駅の建設しかない、と考えます。
ある人がかつて言っていました。「田園都市線は渋谷駅が変われば変わる」。
現在の田園都市線渋谷駅は登り・下り共に1つずつしかホームがありません。大型路線の終着駅としてはあまりにも寂しい状態です。これがせめて登り・下り共に2つずつのホームになれば状態は変わるのではないか、と考えてみます。
現実問題は難しいのかもしれません。というのも田園都市線は渋谷駅の先へ直通運転を行っています。その先は東京メトロと東武鉄道です。一都二県を貫く大型鉄道。「急行」の存在しない東京メトロが先にある以上、東急がどれだけ運行本数を増やしても先が詰まるだけです。
さて、どうするか……。皮肉にもコロナによるリモートワークが解決してくれるかもしれません。
かつて田園都市線ユーザーだった私にとって朝の時間はじれったい時間でした。先を急いで「準急」に乗れば満員電車で【なにもできない】。かといって「各駅停車」に乗れば授業に【遅れかねない】。田園都市ユーザーは朝の時間を捧げる運命にあるのかもしれません。
杉山さんは記事のなかで「急行」電車、ここではリニアの必要性を説いています。というのも本当に【自分の時間が貴重な人】がいるから。
例えば会社の経営者などのVIP。彼ら・彼女らの稼ぎ出す額を考えると、その時間の損失は多大な損失ともなりかねません。だからこそリニアが、時間の短縮が必要なのだと。
確かにいわゆるVIPの方々はそう言いますよね。プライベートジェットを持っている人はそのような考え方を持っている、といえるでしょう。
この考え方を頭から否定するつもりはありませんが、これはあくまでも一握りのVIPの話でしょう。
残念ながら私のようないわゆる一般ピーポーは自分の時間が【そこまで貴重じゃない】ということを自覚する必要があるかもしれません。
というとかなり語弊があるかもしれませんね。具体的には私たちには【無駄な時間】が多いのではないか、ということです。
例えば
- ながらスマホ
- なんとなくユーチューブ
- なんとなくテレビ
など。
これらは私たちの生活にとってそこまで重要な時間ではない、と考える。というのももっと大切な時間が私たちにはあるからだ。
それは睡眠の時間であり、何もしない時間である。
睡眠はがどれだけ私たちの生活の質を支えているかは、世界の著名人が何時間寝ているかを調べてみるとおもしろい。最近では睡眠の【質】をあげるための著書もあり、それらがベストセラーになっていることを鑑みると、私たちがどれだけ睡眠に飢えているかが分かる。
それでも私たちはなんとなくテレビを見て、ユーチューブを見てしまう。そして自らの時間を圧迫している。これをなんとか手放してみないか。
ここで私が申し上げたいのは、私たちが一方で【無駄な時間】を過ごしながら他方で【時間がない、私の時間は貴重だ】と言っていることに対する矛盾と滑稽さである。
そして、これはあのレジの待ち時間の重苦しい空気へと結びつく。
なぜ今日の私たちはレジを待てないのか。
それは単にレジ打ちが遅いのではなく、私たちが待てなくなってしまったのではないか。
私たちが待てなくなってしまったのは、私たちが時間に【追われている】からではないか。
であるならば、レジの待ち時間のあのイライラを解消するには店舗側がシステムを変える(「ゆっくり」専用レジを設ける)のではなく、客である我々の方が変わるべきなのではないか。
電車の運行ダイヤのようにシステムというのは変わることが難しいことも多い。それに比べれば私たち人間は変われる無限の可能性を秘めている。
私の時間には無駄がある。
何かを詰め込もうとして詰め込み過ぎた。
ちなみに私たち現代人がSNS等によって一日に得た情報は江戸時代の庶民が一生で得るものと同程度の量である、といわれている。あまりにも詰め込み過ぎだ。
無駄を削ろう
そうすれば自分が楽になる
みんなが幸せになる
伊藤洋一氏の著書に『一分で話せ』という本がある。
教育評論家の齋藤孝氏はそれに推薦文を寄せている。
同時に齋藤氏はこうも言う。「スケジュール帳はびっしり埋めるな」。
私たちが時間の質を高めるのは新たな予定を埋めるためではない。私たちの真の意味において【自由な】時間を、【安らぎ】の時間を得るためである。
そのために無駄を削ろう。
ちなみにレジの待ち時間が無駄だというのはナンセンスである。
なぜなら、レジでの客と店員とのコミュニケーション、触れ合い。これこそが私たちの至福の時間のはずなのである。これこそが【省いてはいけない】時間なのである。
本当は電車の「急行」のように「急ぎ」or「ゆっくり」のレジを設けたほうがいいのかもしれない。
それでもまずは私たちの無駄を削ろう。
新聞に寄稿された方のお母様はきっと思っているはずである。「本当は店員さんとお話がしたい」と。
私は3年間、レジ業務をして感じたことがある。お客様は私たちとの触れ合いを、対話を望んでいる。
だから私はできるだけお客様との触れ合いに時間をかけ、その分、【時間に追われている】と思われるお客様には対してはせっせと対応にあたる。
気づけば私はそんな器用さをあの職場で身に付けてしまった。
参考
1.「急行電車の混雑」「エスカレーター歩行」はなぜ生まれるか リニアの必要性と“移動”の意味杉山淳一の「週刊鉄道経済」(https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2008/07/news039.html)
2.東急田園都市線の混雑具合は?通勤がラクな始発駅・途中始発駅はどこ?(https://blog.ieagent.jp/eria/denentoshisen-konzatsu-216614)
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