最近、お空を見ることが増えたような気がする。
うらみわびの【きょう考えたこと】第36回
十数年前まではアニメは一部の人が見るもの、というイメージが強かったように思います。それが今では「国民的アニメ」と呼ばれるものまで出てきました。最近では『進撃の巨人』、『鬼滅の刃』や『呪術開戦』などの果たした役割が大きいでしょう。
同時にアニソンという分野の裾野もだいぶ広くなってきたように思われます。ただ、アニメのOPやEDというだけでなく、ひとつの音楽ジャンルとして確立している、といえるでしょう。アニメ本編で声を当てているアニメ声優さんがそのままアニソンも歌う、というパターンも増えてきました。声優のオーディションでは歌も審査の対象となるので、アニメとアニソンは切っても切り離せない関係といえます。
では、そもそもアニメに「音楽」という要素が大きく取り入れられたのはいつからでしょうか。今回は個人的にアニソンの「契機」と考える作品を紹介したいと思います。
それが、かきふらい の『けいおん!』です。
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部活動の軽音部に所属する女子高生4人組とその仲間たちの日々をユニークに描いたコメディな4コマ漫画。
田井中律(ドラムス)、秋山澪(ベース)、琴吹紬(キーボード)といった面々にギター初心者の平沢唯が加わる。
4人はバンド「放課後ティータイム」を結成する。
アニメ制作は京都アニメーション
『けいおん!』の単行本コミックは2008年に発売され、2009年にはアニメが放送スタート。第2期や映画化もされて大ヒット。
そんな『けいおん!』の作画を担当したのが、鮮やかな手書きの作画で有名な京都アニメーション。京アニによるなめらかなキャラクターの動きや緻密な背景がアニメの人気を後押ししたことは間違いないでしょう。
舞台は京都。生徒たちが通う桜が丘高校のモデルとなった学校が滋賀県にあるなど、実在する場所をモデルに作画するのは京アニに伝統芸ともいえるでしょう。こうしてアニメの聖地が多いのも魅力の一つですね。
楽器あるある
本作の内容はクスっと笑えるコメディですが、楽器をやっている人からすると「あるある」が多い、というところも魅力の一つ。例えば、楽器を買ったばかりのときは、とりあえず部屋においてずっと眺めていたり、ギターやベースの練習したての頃は指が固くなっていないので押弦したときに指を痛めたり……。本作はそんな楽器「あるある」にあふれています。ちなみに私は、クラシックギターとエレキベースを少々やっているので、ギター関係の「あるある」はすごい共感しました。
放課後ティータイムの魅力
内容もさることながら、『けいおん!』の人気の背景で欠かせないのが「音楽」の存在です。アニメ化に伴い、劇中歌を含め、数々の楽曲が実際に制作されました。
マンガ内でも少し歌詞などに振れる場面がありました。そこから読者がそれぞれ想像を膨らませながら愉しむ、これも一興ですね。それでも実際に彼女たちの作詞に曲がつくことで、楽曲に魂が込められたようで感動しました。
今回はそんな、私立桜が丘中学校軽音部、通称:放課後ティータイムの楽曲の魅力に迫ります。
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全ての楽器が活きている
放課後ティータイムの楽曲はとにかく楽曲の構成が上手い。すべての楽器に必ず”魅せ場”をつくっている。
バンド音楽というと、メインにギターやキーボードがあり、それをベースやドラムが支える、というのが一般的なイメージとしてあると思います。ギターがカッコいいリフを引いて、ベースはあくまで黒子である。そんな扱いもされがち。その影響もあってか、実際にバンドの華であるギターが演奏者にとって人気があるのに対し、ベースはあまり人気がない、というのはよく聞きます。ギター担当がベースに回る、というのも「あるある」なようです。
ベースってやっぱり地味だよね……、そんな人々の声に「違うぜ!」と言うのが『けいおん!』です。
その構成力で特に舌を巻くのが『ふわふわ時間』。イントロはギター →ベース&ドラムと加わっていく。間奏ではベース&ドラム → ギターへと繋がっていく。大サビでは、まずベースがメロディを弾き、そこにギター、ドラム、キーボードが次々に加わっていき曲を盛り上げラスサビへ繋がる。この楽曲の構成力は「すばらしい」のひとこと。
他にも『ときめきシュガー』のようなベースが完全に主役な楽曲があるのもいいですね。ベースのルート弾きを大切にしている感じがシンプルでいい。
貴重なレフティ
『けいおん!』がベース人気に一役買ったのは間違いない。それはやはり作中のベース担当の秋山澪の存在が大きい。
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元気いっぱいの放課後ティータイムの中で物静かな大人な女の子。実は文芸部志望で放課後ティータイムの楽曲の作詞も多く手掛ける。その見た目と裏腹に、『ふわふわ時間』や『ぴゅあぴゅあはーと』のようなメルヘンな詩が多い、というギャップもある。
そんな彼女はレフティ(左利き)のベーシストという超貴重な存在。それらの際立った特徴も多くのファンの心をつかんでいる要因でしょう。
中学生のころ、遊戯王にハマっていました。
私の友人が「1軍」と称したデッキのカードに秋山澪ちゃんのスリーブを使っていたのが印象的で今も覚えています。
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遊び心が満載
楽曲の随所に遊び心があるのがまたよい。例えば『ごはんはおかず』。スーパーで流れていそうな軽快なイントロから繰り出される”ごはん愛”!作詞・ボーカルの唯ちゃんの暴走に他のメンバーがツッコむのがおもしろい。
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曲のアレンジもやっちゃう。定番の卒業ソングの『翼をください』や自らの校歌『桜が丘女子高等学校校歌』を軽音風にアレンジしちゃう遊び心。このアレンジがまたいい!『翼をください』はアップテンポで原曲よりも好きかも。
作詞の内容も幅広い。『Cagayake!GIRLS』や『いちごパフェが止まらない』のような、いかにも女子高生らしいものもあれば、『Don’t say “lazy”』や『No,Thank You!』のようなストレートに想いをぶつける大人びた歌詞も書く。その幅広さ、洞察力の高さ、作詞力も魅力のひとつ。
私が初めて放課後ティータイムの楽曲に触れたのは大学生のときでした。『Don’t say “lazy”』でした。高校生とは思えない達観した歌詞に驚いたのを覚えています。
幅広い難易度ラインナップ
『けいおん!』を入り口に楽器を手にしてみた人も多いはず。そうなると実際に放課後ティータイムの曲を演奏してみたくなる。実際に演奏してみると曲の難易度の幅広さに驚く。
あくまでギターとベースの目線です!
『ふわふわ時間』や『Don’t say “lazy”』のような比較的簡単で弾きごたえのある楽曲から『Go! Go! Maniac』のような演奏者泣かせな楽曲まで幅広い難易度の曲が揃っている。なので、楽器を練習しながら曲にチャレンジ。放課後ティータイムの楽曲だけでもだいぶモチベーションを高く維持することができる。